リトアニア、ヴィリニュスで実現したNY風ロフトの二人暮らし
抜けのある心地よいニューヨークのロフトスタイルにあこがれて、建築家とダンサーのカップルがマンションのリノベーションで実現した住まいをご紹介します。
「この家についてなら、夕暮れどころか明日の夜まで話せますよ。ここは妻とふたりで暮らす自宅であり、仕事用のスタジオでもあります。内装には、これまで実現できずにいた夢のアイデアをすべて取り入れました」と、建築家のダリウス・レゲルスキスさんは話す。ニューヨークスタイルのロフトに魅かれていたレゲルスキスさんは長いあいだロフトを探していた。そしてリトアニアの首都、ヴィリニュス中心部近くにある元工場の建物を見つけ、明るく機能的な住まいをつくりあげた。
「転機になったのは、ギリシャのクレタ島への旅。クレタ島で休暇を過ごすようになってもう8年になりますが、3年前に行ったとき、偶然、古い木の厚板やよろい戸、ドアなど、木の素材を使ったオリジナルの家具を扱う小さな店に入ったんです。店のオーナーはあちこちのさびれた村を訪ねては、素材を探しているとのことでした。私はすっかり魅了されてしまいましたどれもとてもリアルで、暮らしの息づかいが伝わるかのよう。家具を作るために木を1本も伐採していない点も魅力的だと思いました。結局、店にあった品をほぼそっくり買い占めることに。でも、大事な宝物となった品々の収納場所はどうするのか。またしてもスペースの問題が持ち上がったのです」。
ドレッサー、コーヒーテーブル、ダイニングテーブル、椅子:オイコス
ドレッサー、コーヒーテーブル、ダイニングテーブル、椅子:オイコス
「買いたい物件が見つからないので、賃貸で借りられるロフトを探しました。いくつ見ても、広いだけで全然味気ない空間ばかり。とてもインテリアデザインのスタジオを作ることはできません。凹んでいたところに、不動産エージェントの友人が3軒ほど候補を持ってきてくれました」。
「最初の2つは面白みがなく対象外でしたが、3つ目を見てすぐにこれだと思いました。何よりまず、自分のスタジオが1階にあればいいなとずっと思っていたんです。クライアントが廊下をうろうろしながらどの部屋かな、と探さなくても、外の通りからそのまま入ってこられますから。また、サイドの壁に窓があるロフトスタイルの部屋もここだけでした。一歩足を踏み入れると、すぐに内装の全体像がはっきり思い浮かびました。階段を設けて、そこにキッチンを入れよう、というふうに。迷わず購入しました」。
「最初の2つは面白みがなく対象外でしたが、3つ目を見てすぐにこれだと思いました。何よりまず、自分のスタジオが1階にあればいいなとずっと思っていたんです。クライアントが廊下をうろうろしながらどの部屋かな、と探さなくても、外の通りからそのまま入ってこられますから。また、サイドの壁に窓があるロフトスタイルの部屋もここだけでした。一歩足を踏み入れると、すぐに内装の全体像がはっきり思い浮かびました。階段を設けて、そこにキッチンを入れよう、というふうに。迷わず購入しました」。
レゲルスキスさんがそれだけのインスピレーションを感じた物件は、かつて無線機器工場だった建物のそで部分の1階にあたる。ソ連時代は規模の大きな工場として、市の中心部近くに広大な敷地を占めていた。現在はアート関係の集合工房として生まれ変わり、建築家やアーティスト、写真家、デザイナーなどがスタジオを構えている。
不都合な位置に2本の梁が通っていて、外したりずらしたりできなかったため、思い描いたプランを100パーセント形にすることはできなかった。「あらゆる箇所を測ってみると、計画していたとおりに中2階を造るには少なくとも高さが70センチ足りません。そこで、床の下には砂が入れてあったので、メインのスペースは1メートルほど下へ下げられるのではないかと考えました。ところが、砂を敷いた薄い層の下にはコンクリート屑と石が詰められていたのです。着手する当初は2、3週間くらいかかるつもりでしたが、結局業者さんが80立方メートル以上に相当するコンクリートと石を取り除いてくれました。大がかりな作業のおかげで、天井高が5メートルとれました」。
メインのスペースは床を掘り下げてとれることになり、窓の下枠は床上約190センチの位置に。この下に棚と額に入れた絵、テレビを置くことができた。
ソファと椅子は形を変えられる。ソファの下を引き上げて背もたれを倒すと、広めのベッドに早変わり。椅子も同じくフルサイズのベッドになる。背もたれを定位置にしておけば、テレビの前で何かつまみながらくつろぐのにぴったりだ。
「クレタ島で見つけた個性的な家具になじむテキスタイルがないかと、かなり長いこと探していました」とレゲルスキスさんは言う。「イタリア製のソファを見つけたときはうれしかったですね。廊下のクローゼットについているカラフルな木の扉とほぼ同じ柄なんです。クッションのライトな砂色とクレタ島の海を思わせるブルーの組み合わせも気に入っています」。
クレタ島で実際に使われていた扉を中に収めた、ユニークなガラスのコーヒーテーブル。扉のサイズはわずか1メートル四方だ。扉の鍵もちゃんとついている。
「クレタ島で見つけた個性的な家具になじむテキスタイルがないかと、かなり長いこと探していました」とレゲルスキスさんは言う。「イタリア製のソファを見つけたときはうれしかったですね。廊下のクローゼットについているカラフルな木の扉とほぼ同じ柄なんです。クッションのライトな砂色とクレタ島の海を思わせるブルーの組み合わせも気に入っています」。
クレタ島で実際に使われていた扉を中に収めた、ユニークなガラスのコーヒーテーブル。扉のサイズはわずか1メートル四方だ。扉の鍵もちゃんとついている。
クレタ島で見つけた椅子とテーブル、そしてダークカラーのべ―シックな食器棚2つを中2階下のスペースにうまく収め、あたたかな雰囲気のダイニングエリアに。
しかしここで目を引くのはレゲルスキスさんの描いた絵だ。自分の作品についてレゲルスキスさんはこう語ってくれた。「3年前、ニューヨーク滞在から戻るときに、たくさんの作品を持ち帰ってきました。すべてに共通するコンセプトがあって、それが「One Way」(一方通行)だったんです。通りに立っている一方通行の標識を見て、誰もがそれぞれ追求する人生の道のりに思いをはせました。前回ヴィリニュスで展示会を開いたとき、ほとんどの作品が売れてしまったのですが、ニューヨークのダウンタウンを描いたこの1点だけは手元に残しておきました」。
しかしここで目を引くのはレゲルスキスさんの描いた絵だ。自分の作品についてレゲルスキスさんはこう語ってくれた。「3年前、ニューヨーク滞在から戻るときに、たくさんの作品を持ち帰ってきました。すべてに共通するコンセプトがあって、それが「One Way」(一方通行)だったんです。通りに立っている一方通行の標識を見て、誰もがそれぞれ追求する人生の道のりに思いをはせました。前回ヴィリニュスで展示会を開いたとき、ほとんどの作品が売れてしまったのですが、ニューヨークのダウンタウンを描いたこの1点だけは手元に残しておきました」。
実現するのが大変だったのが、鋳鉄製の柱だった。レゲルスキスさんにとって、アメリカのロフトスタイルを完全に再現するには外せない要素だった。「ニューヨークで、コンテンポラリーなアパートやバー、カフェに古い柱があるのがとてもセンスよく映りました。今でもたくさん残っているので、昔使われていたままの柱を数本程度なら簡単に手に入るし、出せるくらいの額で買えたと思います。でも、リトアニアまでの輸送費を考えると躊躇してしまって、がっかりしていました」。
「そこで夢を実現させるためにほかの方法を探すことにしました。カウナスにある鉄工所のプロにレプリカを作ってもらえないか問い合わせたのですが、ここでも残念な結果になりました。必要な鋳型がないという回答だったので、私の方で立体造形を作れる人に依頼して、私の図面をもとに型を作ってもらう必要がありました。でもこれもまたかなりの費用がかかります。思い描いている形の柱を再現するのは無理なのだろうか、とあきらめそうになりました」。
「そしてついに、中国の工場の代表の方との出会いがありました。最初は20以下の数量では生産できないと断られて、それでは無理だなと完全にあきらめていました。でも少ししてから、柱4本でも作りましょうと言ってくれたんです。それまで方々を調べて当たって、相当な時間を費やしたので、床下の砂や石やコンクリートを掘り出す作業をして工程が遅れたのが結果的に都合がよかった。できあがった柱が届いたのが、ちょうど除去作業が終わったところでしたから。費用も、アメリカで見つけたものを送ってもらったりカウナスの鉄工所に依頼したりするよりも大幅に安くすみました」。
「そこで夢を実現させるためにほかの方法を探すことにしました。カウナスにある鉄工所のプロにレプリカを作ってもらえないか問い合わせたのですが、ここでも残念な結果になりました。必要な鋳型がないという回答だったので、私の方で立体造形を作れる人に依頼して、私の図面をもとに型を作ってもらう必要がありました。でもこれもまたかなりの費用がかかります。思い描いている形の柱を再現するのは無理なのだろうか、とあきらめそうになりました」。
「そしてついに、中国の工場の代表の方との出会いがありました。最初は20以下の数量では生産できないと断られて、それでは無理だなと完全にあきらめていました。でも少ししてから、柱4本でも作りましょうと言ってくれたんです。それまで方々を調べて当たって、相当な時間を費やしたので、床下の砂や石やコンクリートを掘り出す作業をして工程が遅れたのが結果的に都合がよかった。できあがった柱が届いたのが、ちょうど除去作業が終わったところでしたから。費用も、アメリカで見つけたものを送ってもらったりカウナスの鉄工所に依頼したりするよりも大幅に安くすみました」。
「私にとって機能性はつねに優先すべき項目です」とレゲルスキスさんは言う。「空間はすみずみまで活用したいですが、空間そのもののよさを壊してしまってはいけません。この家のように個性ある空間ならなおさらです。通常、階段はかなりの場所をとり、邪魔になりますし、階段下の空間に入るにはかがまなくてはいけません。そうしないために、今回は中2階に階段をはめこむ形にしました。階段は3つのセクションに分かれています。まず、下の数段分は引き出しを設けて、主に建築雑誌をしまっています。その上の段は踏板がそのままカウンターに続き、階段横の柱を巻き込んでいます。踏面自体はすべて同じサイズなので、上がっていくときに違和感は感じません」。
傷みをできるだけ防ぐため、このような階段の素材はハードウッドが適しているが、レゲルスキスさんは伝統的なリトアニアのオーク材は使いたくなかったという。「内装にオークを使うのは飽き飽きしているんです。ですからタモを使うことにしました。木目のうねりがどこに表れるのかわからない、予測のつかない実に美しい木目を持っていますから」。
階段の下はグラスやマグをかけるラックになっている。
階段の下はグラスやマグをかけるラックになっている。
キッチンは中2階の下にあたるため、光が入らず暗い。それでも、レゲルスキスさんはキッチンの壁をマットな黒のチョークボードペイントで塗った。「ニッチなスペースを暗い色でペイントすると、空間に視覚的な広がりが出て、奥行があるように感じられます。ただやはりキッチンはかなり暗くなってしまいました。それでキャビネットドアは白の光沢仕上げを選びました。さらに、あざやかなグリーンをアクセントにして、イメージどおりの雰囲気ができあがりました。」
「標準的なキッチン設備でいくつか欠けているものがあるのがわかりますか?」とレゲルスキスさんがたずねた。一見気づかないが、コンロ、オーブン、換気扇、電子レンジが見あたらない。「4年前から、ふたりともただのヴィーガンではなくてローヴィーガンになりました。ナッツを砕ける強力で質のいいブレンダーと、野菜をジュースにできてナッツオイルも作れる高速ジューサーだけを使います」。
キッチンのキャビネットは奥行が60センチ近くもある。棚を小さく区切って使い勝手をよくするため、扉の裏に奥行15センチのラックをつけた。
シンクの下のごく小さなスペースも使えるように工夫した。スポンジやブラシなどを入れる細いシェルフを取り付けて、45度の角度まで開ける。これはアメリカのデザイン案を取り入れたそう。「リトアニアでは通常、ここは板をはめ込んでカバーするだけです」。
階段わきの床に、鋳鉄製の小さな手洗い場が据えられている。柱を手がけた中国の工場が作ったものだ。ちゃんと水も出るので、友人が犬を連れてきたときはここで犬の足を洗うことができる。「配管工事をした業者の人は、なぜこんなところに水道が必要なんだろう、と不思議に思ったみたいです」とレゲルスキスさんは笑う。
ほかのスペースに目を向けてみよう。「壁に時計がありますよね。これはソ連時代にゲディミナス通りの街路樹の根元を囲っていた古い鋳鉄製の柵なんです。この通りは当時レーニン通りという名前だったのですが、意外にも柵には星型のような思想的なシンボルはまったくなく、リトアニアの装飾らしい花や葉が美しくかたどられています。ゲディミナス通りのアパートに住んでいたとき、通りは再開発が行われていて、柵の格子も取り壊されていきました。私はただ見ているのが耐えられなくなって、友人の手を借りて1枚を手に入れ、4つに分解して一緒に家まで運んでもらいました。ものすごく重いのですが、4階の部屋までなんとか運んで、引っ越すたびに持っていきました」。
「いつか自分の家をデザインするときは、中庭に1本の木を植えて、この美しい鉄格子をかたわらに飾れたらと思っていました。批判する人もいるかもしれませんが、歴史を物語る断片を消さずに残しておきたいという一心でした」。
「いつか自分の家をデザインするときは、中庭に1本の木を植えて、この美しい鉄格子をかたわらに飾れたらと思っていました。批判する人もいるかもしれませんが、歴史を物語る断片を消さずに残しておきたいという一心でした」。
「鋳鉄の柱を含め、ロフト全体の都会的なインテリアと鉄格子がよく合っていると思います。この建物自体、鉄格子の柵と同じ時代に建てられていますから、全体がうまくまとまっています。格子の4枚のパーツは扉みたいに開けられるしくみで、中に調光できる電球をつけました。夜、ゲストが来ているときなどに明かりをともすと、格子の模様の間からやわらかな光が洩れて、何ともいえない美しさを見せます」。
リビングスペースは建築家としてのスタジオでもある。リビングの横に幅3メートルのテーブルを据えつけ、2人分の作業スペースを用意してあるのはそのためだ(レゲルスキスさんはデコレータ―のグレタ・モティエユーニエネさんと共同で仕事をしている)。カウンター式のテーブルは奥行が1メートルあり、下のスペースを書類などの保管に使えるほか、上にはシェルフを置ける。レゲルスキスさんの好みどおり、すべてが機能的にできているのだ。
1階のフロアに敷いたのは80センチ四方のイタリア製タイル。表面にわずかな凹凸のある天然石のタイルで、コンクリートを思わせる。玄関まわりの床はライトグレーのタイル、4段下がったメインのリビングエリアはダークな色のタイルをそれぞれ敷いた。「メインスペース全体を掘り下げた深さを、視覚的にも引き立たせたいと思いました」とレゲルスキスさん。
タイル:オン・スクエア、エミル・セラミカ
タイル:オン・スクエア、エミル・セラミカ
玄関の左手にある細長いスペースは収納とランドリーの部屋で、収納棚と洗濯機、乾燥機がある。「この部屋のいちばんの特徴は、ドアに映画で見かけるようなネコ用の出入口をつけた点です。うちのネコ、プパのためにオーダーしました。プパはブリティッシュショートヘアです。プパは豆という意味で、リトアニアではメスのペットをそう呼んだりします」。
2つのバスルームは、合理的に上下に配置した。ふたりが普段使う上の階のバスルームは、壁にガラスブロックを取り入れた。インダストリアルな建築でよく使われる素材で、バスルームにも自然光が差し込む。
袖壁には5枚のアンティーク写真が飾られている。レゲルスキスさんのコレクションだ。「どれも私の好きなヴィリニュスの街角です。自分が育ち、暮らした場所、ただ歩くのを楽しんだ場所。誰かがきたときに、100年前のヴィリニュスがどんなだったか、今はどうなっているかといった話をするのも好きなんです」。
袖壁には5枚のアンティーク写真が飾られている。レゲルスキスさんのコレクションだ。「どれも私の好きなヴィリニュスの街角です。自分が育ち、暮らした場所、ただ歩くのを楽しんだ場所。誰かがきたときに、100年前のヴィリニュスがどんなだったか、今はどうなっているかといった話をするのも好きなんです」。
下の階のバスルームはゲスト用。壁の一面に家族写真が並ぶ。「アパートメントを借りて住んでいたとき、リビングの中心になるのはいつもいろんな旅先の写真をたくさん飾った壁でした」。とレゲルスキスさんは振り返る。「この家はいろんな要素が盛り込まれて密度が高いため、写真をまとめて飾る場所がほとんどありませんでした。向かい側の壁は大きな鏡なので、シンクで手を洗っているときも写真が目に入ります。写真に囲まれているような感じです」。
「シャワーが隣同士に2台あればいいのに、と以前からふたりとも思っていました。すごく便利です。朝はふたりとも同じ時間に起きて、同時に身じたくをしますから」。
小さな窓はほぼつねに開けてあるので、バスルーム内の風通しはよく、熱や湿気がこもりすぎることはない。
バスルームの水栓金具など: グローエ
小さな窓はほぼつねに開けてあるので、バスルーム内の風通しはよく、熱や湿気がこもりすぎることはない。
バスルームの水栓金具など: グローエ
色彩豊かでさまざまな家具を置いた下のフロアに対し、中2階のプライベートゾーンは一転して落ち着いた控えめな印象だ。すべてはダークカラーの木の床と白いレンガ壁のコントラストを基本に成り立っている。壁はレンガの風合いある質感を残すため、表面に磨きをかけず、白でペイントするにとどめた。
「中2階の床に使ったスプルース材の厚板はエストニアからオーダーしました。かなり幅が広く、24センチあります。同じような板材はリトアニアでは製造していません」。
「中2階の床に使ったスプルース材の厚板はエストニアからオーダーしました。かなり幅が広く、24センチあります。同じような板材はリトアニアでは製造していません」。
ベッドルームの隣の空間の片隅に、レゲルスキスさんはもう1ヵ所、自分のワークスペースを設けた。ひっそりとたたずむ心地よい空間だが、アーティストが求める活気ある雰囲気がしっかり感じられる。
どんなHouzz?
住まい手:建築家、アーティスト、講師であるダリウス・レゲルスキスさん、ダンサー、スタジオ〈リンディ・ホップ〉代表で、妻のエグラ・レゲルスキスさん、飼い猫のプパ
所在地:リトアニア、ヴィリニュス
竣工:2014年
規模:総面積:94平方メートル。1階:68.4平方メートル、中2階:25.6平方メートル
設計:ダリウス・レゲルスキス〈ダリウス&グレタ・デザイン〉
レゲルスキスさんにとって、自分のための家づくりに取りかかるまでが長い道のりだった。だからこそプロジェクトについて語る口調も熱を帯びる。「ここ数年、ヴィリニュス市内で物件を探していたのですが、見つかるのはどれも間口が狭くて細長くて、メインの窓は奥の方にしかない、居心地の悪そうなうなぎの寝床ばかりでした。そこで、とりあえず街の中心部でアパートメントを借りることにし、7年ほど賃貸で暮らしました。初めは市内の目抜き通り、ゲディミナス通りにあるアパートで、その後、近くの別のアパートメントへ移りました」。