House Re-edited by Arches
アーチと動線を追加して、生活体験の再編集を試みたリノベーション住宅。
既存建物はメーカーの商品住宅で、パティオやバルコニーなどの外部空間に特長がある。しかし生活の中でその外部空間をうまく使えていないため、何かいい方法がないだろうか、というのが建主夫妻からの主な相談のひとつだった。当初は新築する話も出ていたが、築年数がそれほど古くなく、外部空間も含めて全体がニュートラルなグリッドプランで必要面積も確保されていることから、最終的に空間の潜在価値を引き出す目的でリノベーションすることになった。
前面道路に向けて既存建物には多くの窓が設けられていたが、プライバシー確保のためカーテンを開けられないこと、北側で陽が当たらないこと、窓自体が結露の原因になっていることなどからすべて塞ぎ、中央に木枠のアーチ扉を新設した。ハロウィンやクリスマスのなど季節の装飾品をディスプレイしたり、店舗のように情報を掲示できるように、アーチ扉には透明ガラスを嵌めてある。
建主夫妻は暮らしを楽しむことにとても積極的で、旅行・クルマ・フラワーアート・舞台鑑賞など多彩な趣味があり、アンティーク品やミュージカルのポスターなどを数多く収集している。海外在住経験もあって交友関係が広く、友人を招いてのBBQパーティを定期的に開くなど、来客も多い。アーチ扉は、そんな夫妻の対外的なコミュニケーションツールとして機能することを想定した。
実はこのアーチ扉は高さが1.5mほどしかなく、ハンドルがないため出入りはできない。その右隣にある大きなアーチ開口が玄関ポーチになっていて、内部にハンドルがあり、出入りはこちらから行う。
その玄関から入った正面に、1階パティオまで土足で歩ける石張りのカーブした小道を設けた。パティオの上部には開閉式のタープを取り付けてあり、閉めればパティオ自体が半屋内空間のような居心地になる。そしてさらにパティオから2階のバルコニーまで上がれるように、鉄骨の屋外階段を新設した。
上がった先のバルコニーからは直に2階のLDKに入ることができ、そこから既存の屋内階段を下れば玄関に戻ることができる。既存建物の特長でありながらうまく使われていなかったパティオとバルコニーを屋外階段で繋げることで、屋内外を通り抜けて住宅内を回遊できる新たな動線をつくっている。既存を再利用した木製の屋内階段は、回遊動線に沿うように下から2段目までの踏板形状を変更した。
既存建物はツーバイフォーで間取りの変更が難しいことから、壁を撤去するのではなく、動線上の要所にアーチを追加することで空間同士の関係調整を図っている。たとえばLDKの間や廊下の途中にアーチを設けると、空間の実体的な大きさは変わらなくても、向こうと手前が認識されることによって感覚的な奥行きが生まれる、といった具合だ。
アーチによって生じる奥行きは、住宅内の回遊動線からファサードまで断続的に連なっている。実体的な間取り変更というよりも概念的な間取り変更によって、生活体験の認識だけでなく前面道路の風景も更新しようと試みた。
日本ツーバイフォー建築協会の公表資料では、2024年度の木造住宅着工に占めるツーバイフォー住宅の割合は20.9%とされている。ツーバイフォー工法は1900年代初期にアメリカから導入され、高度経済成長期を経て1974年に技術基準がオープンになり、2000年の建築基準法改正で性能規定化された。これまで数多くの住宅がこの工法で建てられ、日本中にストックされている。間取りの変更が難しいことがリノベーションの制約になっているが、捉え方を変えて再編集することで、本来持っている空間の潜在価値を引き出して新たな使い方に生かせるのではないだろうか。今回の試みが、そのストック活用の一例になればと考えている。
建主夫妻によれば、竣工後、通りかかった人たちがディスプレイされたアーチ扉の前で足を止めたり、走行中のクルマがスローダウンすることもあるのこと。これからの生活体験がより充実したものになってゆくことを期待すると同時に、この住宅を巡ってどのようにコミュニティが広がってゆくのか、楽しみにしている。
-中佐昭夫-
既存建物はメーカーの商品住宅で、パティオやバルコニーなどの外部空間に特長がある。しかし生活の中でその外部空間をうまく使えていないため、何かいい方法がないだろうか、というのが建主夫妻からの主な相談のひとつだった。当初は新築する話も出ていたが、築年数がそれほど古くなく、外部空間も含めて全体がニュートラルなグリッドプランで必要面積も確保されていることから、最終的に空間の潜在価値を引き出す目的でリノベーションすることになった。
前面道路に向けて既存建物には多くの窓が設けられていたが、プライバシー確保のためカーテンを開けられないこと、北側で陽が当たらないこと、窓自体が結露の原因になっていることなどからすべて塞ぎ、中央に木枠のアーチ扉を新設した。ハロウィンやクリスマスのなど季節の装飾品をディスプレイしたり、店舗のように情報を掲示できるように、アーチ扉には透明ガラスを嵌めてある。
建主夫妻は暮らしを楽しむことにとても積極的で、旅行・クルマ・フラワーアート・舞台鑑賞など多彩な趣味があり、アンティーク品やミュージカルのポスターなどを数多く収集している。海外在住経験もあって交友関係が広く、友人を招いてのBBQパーティを定期的に開くなど、来客も多い。アーチ扉は、そんな夫妻の対外的なコミュニケーションツールとして機能することを想定した。
実はこのアーチ扉は高さが1.5mほどしかなく、ハンドルがないため出入りはできない。その右隣にある大きなアーチ開口が玄関ポーチになっていて、内部にハンドルがあり、出入りはこちらから行う。
その玄関から入った正面に、1階パティオまで土足で歩ける石張りのカーブした小道を設けた。パティオの上部には開閉式のタープを取り付けてあり、閉めればパティオ自体が半屋内空間のような居心地になる。そしてさらにパティオから2階のバルコニーまで上がれるように、鉄骨の屋外階段を新設した。
上がった先のバルコニーからは直に2階のLDKに入ることができ、そこから既存の屋内階段を下れば玄関に戻ることができる。既存建物の特長でありながらうまく使われていなかったパティオとバルコニーを屋外階段で繋げることで、屋内外を通り抜けて住宅内を回遊できる新たな動線をつくっている。既存を再利用した木製の屋内階段は、回遊動線に沿うように下から2段目までの踏板形状を変更した。
既存建物はツーバイフォーで間取りの変更が難しいことから、壁を撤去するのではなく、動線上の要所にアーチを追加することで空間同士の関係調整を図っている。たとえばLDKの間や廊下の途中にアーチを設けると、空間の実体的な大きさは変わらなくても、向こうと手前が認識されることによって感覚的な奥行きが生まれる、といった具合だ。
アーチによって生じる奥行きは、住宅内の回遊動線からファサードまで断続的に連なっている。実体的な間取り変更というよりも概念的な間取り変更によって、生活体験の認識だけでなく前面道路の風景も更新しようと試みた。
日本ツーバイフォー建築協会の公表資料では、2024年度の木造住宅着工に占めるツーバイフォー住宅の割合は20.9%とされている。ツーバイフォー工法は1900年代初期にアメリカから導入され、高度経済成長期を経て1974年に技術基準がオープンになり、2000年の建築基準法改正で性能規定化された。これまで数多くの住宅がこの工法で建てられ、日本中にストックされている。間取りの変更が難しいことがリノベーションの制約になっているが、捉え方を変えて再編集することで、本来持っている空間の潜在価値を引き出して新たな使い方に生かせるのではないだろうか。今回の試みが、そのストック活用の一例になればと考えている。
建主夫妻によれば、竣工後、通りかかった人たちがディスプレイされたアーチ扉の前で足を止めたり、走行中のクルマがスローダウンすることもあるのこと。これからの生活体験がより充実したものになってゆくことを期待すると同時に、この住宅を巡ってどのようにコミュニティが広がってゆくのか、楽しみにしている。
-中佐昭夫-
Project Year: 2024
Project Cost: JPY 30,000,001 - JPY 50,000,000
Country: Japan