Houzzツアー:冬は雪景色、夏は緑を眺めるコーナー窓のある家(旧)
オーナーはかねてより「大きな家より、小さくてもディテールにこだわった家にしたい」との思いを抱いていたという。その気持ちと土地の恵まれたポテンシャルを見事に融合させた、相乗効果の織りなす家として完成させたのが、地元・長野市の〈スズケン一級建築士事務所〉である。
リビングを横から見ると、窓に向かって天井が勾配し低くなっているのがわかるが、なぜか圧迫感は感じない。大きな窓へと視線が向かい、かえって開放感を生み出しているからである。天井を低くして壁面積を減らし、相対的に窓を大きく見せることでも同じ効果を狙っている。天井が下がった先の窓(写真左側窓)の垂れ壁をなくしたり、隣の窓上の三角部分をシャープな鋭角にしたのも、スムーズに視線が抜けるようにするための細かなこだわりの演出。壁と天井との間は、少し隙間をとった「目透かし納まり」にすることで、さらにすっきりとした印象に仕上げている。 床はパイン材のオイルフィニッシュ。ダークブラウンの色合いは、打ち合わせ当初からのオーナー夫妻のリクエストだったため、その色をベースに全体のイメージを深めていった。シンプルな建物のアクセントとなっている腰下の壁や、造作の壁面収納の色味も、床色に合わせて現場で調整したそう。壁面の収納棚は長さ4.6m、奥行き40cm。
どんなHouzz? 所在地 : 長野県飯山市 家族構成 : 30代夫婦、子供1人 敷地面積 : 496.21平方メートル(150.11坪) 延床面積 :75.36平方メートル(22.80坪) 構造 : 在来木造2階建て 設計監理 : スズケン一級建築士事務所 構造設計 : THR構造設計室 竣工 : 2015年10月 写真:畑亮 この家で気に入っているところは?とオーナーに尋ねたところ、「家族がそれぞれの過ごし方をしながらも、常にスペースを共有しているところです。テレビを観る人、洗い物をする人、お絵かきをする人が、自然と一緒の空間にいるのがいいですね」と答えてくれた。写真でもおわかりのように、キッチン、ダイニング、ワークコーナーがひとつのスペースに集中してレイアウトしてあるのは、この家の特長のひとつである。鈴木さんは「日常的に家族が使う場所というのは案外限られています。頻繁に使うスペースを高密度に集めることで、家族のコミュニケーションが濃密になっていきます」と語る。 右手奥のワークスペースは主に、ご主人のパソコンスペース。適度に閉じた空間も好みだということで、窓は小さくしてリビングとメリハリをつけ、壁色は床と合わせてトーンを落として大人っぽく落ち着いた一角となっている。
2階に上がるとまず、リビングダイニングの先にある大きな窓へと、視線が自然と惹きつけられる。コーナーの2面に設けられた、大胆でダイナミックな窓。このために外の景色と室内との多方向のつながりが生まれ、空間に大きな開放感をもたらしている。「生活空間における外部とのつながりや、視線の通り方を工夫することは、とても重要なことと考えています。土地の条件を読み込みながら、オーナー様の意向を反映するうえで、最も大切にしていることのひとつです」と、〈スズケン一級建築士事務所〉の鈴木貴詞さん。この窓は「壁に窓を開けたのではなく、壁の一部を取り払ってガラスを入れたような」イメージで作ったのだとか。オーナー夫妻が愛する土地の美しい風景を生活の中に織り込み、この家らしいインテリアとして完成させた素晴らしい趣向である。 特筆したいのは、窓から雑木林の景色が偶然見えているのではなく、見たい景色に窓が向くよう計算されている点だ。そのために建物の配置(=コーナー窓)を、雑木林の方向に少しだけずらしたのだという。「実際どのように雑木林に向いているのか、最終的には現場で地縄を調整し、オーナー様にご確認いただきながら決めました。広い土地だからこそできる、なかなか楽しい作業でした」。
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