マスターベッドルームには、ライト設計のランタン型照明が2つあり、家の角を包み込むように窓がある。ライトは角の扱いに細心の注意を払っているが、それはソニアさんがこの家から学び、ずっと意識していることだという。「どこかに出かけて、美しくないコーナー部分やスペースを目にするたびに、この家ではいたるところが完璧だと、改めて思い出すんです。」
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暖炉付きの屋上デッキ。ライトの設計にしてはとても珍しいからです」とソニアさんは言う。「屋上デッキは、峡谷を見下ろせる彫刻庭園にするというのがライトの意図だったようですが、私たちは単にデッキとして使っていました。」
オフィススペースを見ると、窓のディテールがよくわかる。窓枠には、建設当時はこの地方で簡単に手に入ったレッドガム材が使われている。写真左側のドアノブにも注目したい。あらゆる要素が入念に考えられているのだ。
裏のパティオは、周囲の2面が家の外壁に接し、残りの面は柔らかな緑の葉に覆われている。
。「お母さまはキッチンが完璧に片付いていない限り人に見られることを嫌がっていた、と話してくれました」とソニアさん。「だから、キッチンの窓を高く配置して中が見えないようにしてほしいと、ライトに依頼したんだそうです。」
外から見た軒と、窓枠のラインのようすが見える。
ポーチは4.6×6メートルほどの空間で、周囲はほぼすべてガラス窓だ。「ポーチにある床から天井までの窓は、1915年当時には珍しいものでしたが、実に見事ですね」とソニアさんは言う。
ライブラリーエリアは、こちらの大きな部屋(図面の「リビングルーム」)とつながっており、この部屋からはポーチ(サンルーム)とその向こうに広がる屋外が見渡せる。
こちらは1階の平面図。家の中を移動しながら部屋から部屋へとつながっていく流れが把握できるだろう。
ニュートラルなアーストーンの色使いや、夫妻のコレクションしている陶器などの有機的なアイテムが、敷地の景観に調和している。
これらの照明を使うと絵画などを壁に飾るスペースが限られてしまううえ、修復も難しかったのだが、それでもソニアさんがこの家でいちばん気に入っているところのひとつだと言う。「ランタンの照明はとてもエレガントで、ほんとうに美しい光を放ってくれるんです」とソニアさん。
修復の長い道のり 「夫が当時、材木ビジネスに関わっていたことがとても幸運でした」とソニアさんは言う。「家に使われているのと同じ珍しい種類の木が必要なときにも、探し当てて手に入れることができました。」その一例が、こちらのエントランスホールの床材だ。テッドさんは、同じオーク種の細い板材を探し回り、ついにミシガン州の小さな材木店で見つけることができた。「業界とのつながりがあったおかげで、きちんと修復できたのは幸運でしたね。」
この家には長方形のフォルムが一貫して使われており、窓や木製の造作のほか、ライトがこの家専用にデザインした照明器具にも繰り返し登場する。
長く伸びる水平ラインを強調した大きな家が渓谷に隣接して流れを見下ろす、というデザインは廃された。その代わりにライトが考えたのは、垂直方向から渓谷とのつながりをつくる住宅だ。すでに完成していた管理人用コテージと厩舎兼ガレージを、中央の縦長コアでつなげて住まいにつくり変えたのである。中央のコアは3階建てで、屋上デッキに出られるポーチが4階部分になっている。屋上デッキは、木々のこずえ越しに渓谷を眺める場所としてつくられた。
垂直よりも水平方向を強調するライトのプレーリー住宅としては、この家の高さとマッシングや、屋上デッキがあることは珍しい。 ライトはキャリアの初期に、グレンコーで複数のプレーリー住宅を設計しており、グレンコーはライトが手掛けた建築が世界で3番目に多い町となっている。その大きな要因が、ライトの弁護士だったシャーマン・ブースとその妻エリザベスの存在だ。
2016年、イリノイ州グレンコーにあるフランク・ロイド・ライト設計の《シャーマン・ブース邸》は100周年を迎えた。その100年のうち半分をこの家で暮らしたのが、ソニア・ブロックさんだ。
マスターベッドルームには、ライト設計のランタン型照明が2つあり、家の角を包み込むように窓がある。ライトは角の扱いに細心の注意を払っているが、それはソニアさんがこの家から学び、ずっと意識していることだという。「どこかに出かけて、美しくないコーナー部分やスペースを目にするたびに、この家ではいたるところが完璧だと、改めて思い出すんです。」
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